SCENE6:記憶、力の暴発【有羽】
体が引き裂かれそうな痛みと熱だった。 どこか懐かしくもあり、思い出すと胸が苦しくなる痛み。 それは、大切な人との別れの合図。遠藤えんどう遼太朗りょうたろうの命の灯ともしびが消えたと感じた恐怖。二度とは体験したくない…
体が引き裂かれそうな痛みと熱だった。 どこか懐かしくもあり、思い出すと胸が苦しくなる痛み。 それは、大切な人との別れの合図。遠藤えんどう遼太朗りょうたろうの命の灯ともしびが消えたと感じた恐怖。二度とは体験したくない…
まずいな。あれは囮だったのかもしれない。 建物が封鎖される10分前、スタッフ通用口から出たある男性を追って外に出た智孝は、通常ならば立ち寄らない配電装置の前で佇んでいるその様子を探っていた。 魄がとりついてるのは間…
非常ベルの音が鳴り響き、続いて何かがぶつかる音や物が壊れるような聞き慣れない衝突音がすれば、会場内はいよいよパニック状態になった。正面玄関へ向かおうと避難する人々が互いを押し合い、もつれるようにして会場を後にする。突然…
「くうー! 一仕事終えた後のスイーツはうまい!」 ストレス解消に酒を飲むサラリーマンが言いそうなことを口にしながら、有羽は目の前にあるチョコレート味のシフォンケーキを頬張った。疲れた後のこの甘味。たまらない。 「結局、…
「D1だ。気をつけろよ」 「了解」 舞台の袖に裏方として様子を見ていた伊藤智孝いとうともたかは、簡単な英数字でそう指示を出した。 多種芸術講演会と称したイベントで、中国の舞を踊るような衣装を身につけた玖堂有羽くどうゆ…
公演が始まる10分前。 最後のトイレに行く者、パンフレットを手にこれから始まることに胸を躍らせる者、主催側の最後のチェックなど、このコンサートホールは様々な音で賑わっていた。 200席ほど入りそうな広さの客席部分に…