「やっぱり、伊藤先生と晟だったんだね」

 約束通り指定された部屋を訪れた有羽と、その傍らに立つ二人の男性の姿を見て聖はそう言った。
『調べ物』をするには最適な環境が整っている小部屋に招き入れ、各々は近くの椅子に座る。自分も今まで座っていた席に腰を落とすと、おもむろに口を開いた。

「わざわざすみません。ちょっと個人的なことだから、あの場で言うのはどうかな?と思って」
「いや、俺たちの方こそ良かったのか?」
「有羽がよければ問題ないかと。ね?」

耳打ちされた内容が「聞いてもらいたい人がいるんだけど、一緒に行ってもいい?」であったことから有羽にそう確認をとる。彼女はこくりと頷いてOKのサインを出した。

「早速ですが、もしかするとという僕の推測をお話します」

 そう口にすると、ほんの少しだけ空気がピリッとした。

「有羽、君が契約した朧の名前は何て言うの?」

 瞬間、有羽の目が見開かれた。息をのむ音がこちらまで聞こえる。

「あ……えと、何で?」
「これから話すことの可能性を高くしたいからさ」

 ひどく困惑している様子だった。
 朧は『鬼の力』そのものだ。形を石──宝玉としてしているが、力の元となる鬼がいるということだ。朧を使うには、それに込められた鬼の魂と血の契約をしなければならない。だから朧一つ一つには名前があった。聖はその名を聞いたのだった。
 答えられないということは、先程抱いた疑問同様の理由があるからだろうと予想し、やんわりと訂正した。

「君を責めてるつもりはないよ。初めて自己紹介した時、君は『字守もどき』って言っただろ? 何かそれが引っかかってね。何でもどき・・・なんて言ったんだろうって。僕だったら絶対言わないと思ったんだ」
「でも、それは人それぞれなんじゃねーの? 有羽はもどきだと思ってるだけで」

 晟が有羽にとっての助け船を出した。

「僕は普段、魄の研究をしてるけど、自分のことを字守だとも思ってるよ。海白先生も、野田先輩も字守であればそれを否定することはしなかった。里紗は朧が使えないから、はっきりと字守じゃないって言ってたし。じゃあ、有羽は?って考えたら、字守だって言えない何かがあるんじゃないかと。別に、朧の名前が言えなくてもいいんだ。さっきも言ったけど、それで責めたり何かしたいわけじゃない」
「可能性を高めたいんだったな」
「そうです。もし、血の契約を交わすことなく朧が使えるのだとしたら……鬼である可能性が高い」




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