連絡が入ったのは、到着時間10分前のことだった。
 研究施設は山間地帯に位置し、車で付近まで向かった後は徒歩での移動となっていた。その車内でよからぬ連絡がMARSから届いたのだ。

「工場内より、生物兵器と思われる物体が脱走。我々は捕獲に向かう。合流地点でその詳細を確認後、資料収集の任務を続行せよ」

 それを聞いて車内がざわつく。
 これに智孝はいささか疑問がわいた。今回のテストは実戦的過ぎる・・・・・・のだ。MARSの関与はこれまでも度々あったが、それにしては情報が少なく、どことなく濁っている。

「なんというか、ちょっと出来過ぎてるね。演出なのかな?」

 遼太朗が代弁する。そうなのだ。テストを審査する字守達も、何が起きてもいいようなメンバーで構成されていることにも引っかかった。このトリガーは何を意味しているのか?その注意を字守たちの間で交わされた後、合流地点へと到着した。
 それからは生物兵器の目撃情報と、施設内の管理室へ向かったMARSのメンバーによる施錠状態の報告を聞き、いよいよ戦地へ赴くことになった。

 敷地内は驚くほど静かだった。闇に包まれた木々が風によって葉を揺らす音だけが取り残され、他には何も感じられない。人の気配も、何もだ。
 それもそのはずで、研究施設に辿りつくまでの間に、いくつもの死体が智孝達を迎え入れていたのだ。
 生物兵器にやられたのか、体には何かに引き裂かれたような傷痕や、獣に喰いちぎられたような痕もあった。
 諫美や有羽は初めて見る景色に恐怖を募らせる。胸やけや悪寒が起こり、その感覚にも顔を歪ませた。零れそうになるショックの声を必死に呑み込んでいる。
 その人の道を素通りすると、研究所の入口はあった。報告通り、出入りが容易で電気も通っているようだ。

「しかし……静かだな」

 自分の声が妙に響いた。

 既にMARSは生物兵器を捕獲したのだろうか?建物の内部の構造も目標物もわからず、こんな闇夜の中、自分達が到着する3~40分程度で?
 全滅してしまったのかと思うほどの静寂に、智孝を始め、字守達は生物兵器ではない敵の存在を危惧する。
 悲鳴も銃声も何一つ耳に届かず、もう起き上がることのない人達が、無言のまま智孝たちを出迎えた──




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